『5年後も必要な情報技術』 JISA技術強化委員会

■はじめに
『5年後も必要な情報技術』は JISA技術強化委員会の活動「情報技術マップ調査の活動が10年目を迎えた節目として情報技術マップワーキンググループ(以下、WG)が作成したものです。
2020年には、ビジネスがデジタルすることで、必要とされるIT技術も大きく変化することが推測されます。そこで、WGでは「情報技術マップ調査」活動の中で情報技術の採用実績を毎年アンケート調査しており、過去 10年間分の調査データを利用して「5年後も必要な技術」を予想しました。

情報技術マップ調査では過去10年間に通算620社、2万5千人のご協力をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。また、会員企業におかれましては別途 2015年度の情報技術マップ調査への回答協力を依頼させていただいております。回答期間は2016年1月29日までとなっておりますので本年も何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
2015年度の報告書の発行予定時期は 2016年 5月頃を予定しております。

■「情報技術マップ調査」について
情報技術マップ調査はシステムインテグレーション(SI)に用いられる要素技術が普及から衰退までのライフサイクルを辿るという前提に立ち、各要素技術が今どのようなステージにあるかを可視化することを活動内容としています。情報技術マップにより技術者各個人、SI 企業、ユーザ企業のそれぞれが技術動向を把握することが可能となり、今後の成長戦略を検討する際に活用されること等を期待しています。
アンケート調査では JISA会員である国内情報サービス産業に携わる企業(会員企業数は2015年時点で520社)の IT技術者を調査対象として、メインフレーム、サーバ仮想化技術、スマートフォンやC言語などの 120超の要素技術について、業務での採用実績や、今後の着手意向といった取り組み状況を聞いています。その結果は要素技術ごとに「ライフサイクルマップ」として研究期、普及期、安定期、衰退期の4段階に分類しています。

2004
2005
2006
2007
2008
2009
2011
2012
2013
2014
年度
研究期 普及期 安定期(仮) 衰退期

要素技術名
サーバ仮想化技術

【図:ライフサイクルマップの例】

A. ホスト・サーバ・ストレージ
B. OS・サーバソフト
C. システム連携とミドルウェア
E. コンテンツ・ナレッジ管理
およびコラボレーション技術
F. データベース関連技術
G. ネットワーク技術およびアプリケーション
I. セキュリティ関連技術
J. 開発言語
H. クライアント端末関連技術
K. 開発環境・ 開発ツール
L. 開発手法・ 開発プロセス
M. 運用管理
N. IT ガバナンス・マネージメント
JISA版ITディレクトリの全体構造
D.クラウドコンピューヒング

【図:情報技術マップの調査分野】

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■「5年後も必要な情報技術」の選定方法
情報技術マップ調査では「この技術の利用実績がある」と回答された割合を「SI実績指数」として集計しています。今回は2004年から2014年までの10回分(2010年は欠測)のSI実績指数を元に 2020年までの予測グラフ(対数近似)を作成しました。この技術分野ごとの予測グラフを元にWGメンバーで近年の技術動向を踏まえたディスカッションを行い「5年後も必要な情報技術」を選定しております。
なお、情報技術マップ調査では世の中の技術動向に応じてアンケート対象の要素技術の入れ替えを行っているため調査期間が数年程度しかない要素技術も少なくありません。そのため今回の予想ではほぼ10年間継続して調査対象となっている要素技術に絞り分析を行っています。

今回の調査対象
技術分野 要素技術
1)基盤技術 メインフレーム
IAサーバ
Unixサーバ
サーバ仮想化技術
(参考)クラウド SaaS
PaaS
HaaS・IaaS
2)サーバ OS Windows系サーバ OS
Unixサーバ OS
Linux等オープンソースのサーバOS
メインフレーム用OS
3)ミドルウェア 商用Webアプリケーションサーバ
オープンソースアプリケーションサーバ
商用 DBMS
オープンソース DBMS
BI
4

技術分野 要素技術
4)プログラム言語
COBOL
Java
VisualBasic
C/C++
C#
プログラム言語
(フレームワーク)
Java EE
.NET Framework
5)セキュリティ 侵入監視ツール
シングル・サインオン
フィルタリング
情報漏洩防止ツール
ウイルス対策ソフト
6)開発技術 テスト支援/自動化ツール
アジャイル開発/反復型開発
ウォーターフォール開発
7)開発管理 プロジェクトマネジメント手法
ITIL/ITSMS
CMM/CMMI
ISMS
8)クライアント スマートフォン
業務端末/公衆端末
(参考)タブレット
5

WGメンバー意見
? サーバ仮想化技術は当面は必要とされるだろう。
? サーバハードウェアは 3種とも伸びが小さい
? IAはクラウド(次頁参照)への移行が進みそうだ。
? 仮想化技術に目が行きがちだが、IAの急な減り方と比較した場合にメインフレームやUNIXは安定している。今後も現状維持が続くのではないか。

5年後も必要な情報技術(サーバ分野)
サーバ仮想化技術

メインフレーム
IAサーバ
Unixサーバ
サーバ仮想化技術
0.000
0.100
0.200
0.300
0.400
0.500
0.600
0.700
0.800
0.900
1.000
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
サーバ
A. メインフレーム A. IAサーバ A. Unixサーバ B. サーバ仮想化技術
対数 (A. メインフレーム) 対数 (A. IAサーバ) 対数 (A. Unixサーバ) 対数 (B. サーバ仮想化技術)
6

? クラウド技術は、各メーカーが利用別(目的別)のソリューションも提供してきており、資産を持たない方向性の企業にとっては不可欠な要素となることから、確実に拡大してゆくことが想定される。
? 観測期間が 10年に達していないため参考として扱うが、2020年も「必要とされる」技術となるだろう。

SaaS
y = -0.008ln(x) + 0.4013
PaaS
y = 0.145ln(x) - 0.1452
HaaS・IaaS
y = -0.037ln(x) + 0.9298
0.000
0.100
0.200
0.300
0.400
0.500
0.600
0.700
0.800
0.900
1.000
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
クラウド(参考)
D. SaaS D.PaaS D.HaaS・IaaS 対数 (D. SaaS) 対数 (D.PaaS) 対数 (D.HaaS・IaaS)
7

WGメンバー意見
? Linux等オープンソースのサーバ OSは一貫して成長している。実績ではUnixサーバOSを追い抜きWindowsサーバOSを追っている。
? 商用のサーバOSはいずれも今後伸び悩みそうに見える。
? オンプレミスのサーバは徐々にクラウドへの置き換えが進むのではないか?クラウドでも実行環境やミドルウェアのチューニングの余地は残ると思われるがOS自体を触れる機会は減るのではないか。
? ただしクラウド化できない一定数のサーバOSは残り続けるだろう。サーバOSを扱う技術者の対象はそういったものが中心となるため活躍の場面は高集約かつ統合的な基盤を構築するといった道筋になるのではないか?技術者にとっては少数精鋭の道となりそう。

5年後も必要な情報技術(サーバOS分野)
Linux等オープンソースのサーバOS
Windows系サーバOS
UnixサーバOS
Linux等オープンソースのサーバOS
メインフレーム用OS
0.000
0.100
0.200
0.300
0.400
0.500
0.600
0.700
0.800
0.900
1.000
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
サーバOS
B. Windows系サーバOS B. UnixサーバOS B. Linux等オープンソースのサーバOS
B. メインフレーム用OS 対数 (B. Windows系サーバOS) 対数 (B. UnixサーバOS)
対数 (B. Linux等オープンソースのサーバOS) 対数 (B. メインフレーム用OS)
8

WGメンバー意見
? DBMSとアプリケーションサーバの両者ともオープンソース系が堅調に成長し、商用は伸び悩みそうに見える。ただし実績の大小では商用がまだ優位。
? オープンソースDBMSは性能、機能の拡充により今後拡大は見込める。
? 一方でデータマネジメントへの関心の高まりからか BIも伸びており商用DBMSにおけるBIとの統合運用性は今後オープンソース DBMSの追撃をかわす成長の鍵となるかもしれない。
? 特に商用ミドルウェアが重視されるようなミッションクリティカル寄りの分野ではプライベートクラウドのような集約基盤が増えており、従事する技術者が少数精鋭化するのでは?
? BIは伸びそう。

5年後も必要な情報技術(ミドルウェア分野)
オープンソースアプリケーションサーバ
オープンソース DBMS
BI

商用Webアプリケーションサーバ
オープンソースアプリケーションサーバ
商用DBMS
オープンソースDBMS
BI
0.000
0.100
0.200
0.300
0.400
0.500
0.600
0.700
0.800
0.900
1.000
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
ミドルウェア
C. 商用Webアプリケーションサーバ C. オープンソースアプリケーションサーバ F. 商用DBMS
F. オープンソースDBMS F. BI 対数 (C. 商用Webアプリケーションサーバ)
対数 (C. オープンソースアプリケーションサーバ) 対数 (F. 商用DBMS) 対数 (F. オープンソースDBMS)
対数 (F. BI)
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