会津という神話〈二つの戦後〉をめぐる”死者の政治学” 単行本 出

面白い本です。
専門書でありませんが歴史学専門家が書いてる解説書です。
通説を真っ向から批判する論争の書です。

内容(「BOOK」データベースより)
幕末維新期、戊辰戦争を頂点とする一連の戦いにおいて、会津の戦死者はナショナルな祭祀から排除された。彼らと、生き残った会津の人々とが経験した「犬死に」―この非業と不条理に満ちた死の経験は、その後どのように「克服」され、「解決」されていったのか。本書では、戊辰戦争西南戦争での戦死者を会津の人々がどのように認識し、自らのアイデンティティを組み立てていったのかを明らかにする。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
田中/悟
1970年大阪市生まれ。1993年京都大学文学部卒業。社会人を経て、2002年立命館大学法学部中退。2008年神戸大学大学院国際協力研究科博士課程修了。博士(政治学)。現在、神戸大学大学院国際協力研究科助教。この間、成均館大学校東アジア学術院研究員、国際日本文化研究センター共同研究員、大阪女学院短期大学非常勤講師、ソウル大学校国際学研究所客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

《目次》
序章 死者と共同体
第1章 会津藩戊辰戦争―近代会津へのプロローグ
第2章 「阿蘇佐川官兵衛」をめぐる記憶と忘却
第3章 近代会津アイデンティティの系譜
第4章 「雪冤勤皇」期会津における戦死者の記憶と忘却
第5章 戦後会津における「観光史学」の軌跡
終章 “二つの戦後”をめぐる“死者の政治学


《最新書評》
「いまだに長州への怨念(おんねん)を抱いている」
 お酒の席でそんな思いを吐露する会津の人と、私はこれまで何度も出会ってきた。幕末の戊辰戦争で長州軍にさんざん痛めつけられた会津は、いまでもその時の恨みを忘れていないというのである。
 しかし、本書の著者はそのような感情は戦後になって高揚したもので、戦前・戦中の会津では、長州人と同じ「勤皇精神」の持ち主だという思いが大勢を占めていたという。「長州への怨念」は、戦後に「無垢(むく)な敗者」「近代日本の被害者」というアイデンティティーを獲得する過程で、あらためて喚起され直した感情だというのである。
 戊辰戦争の死者は、明治政府によって「賊軍」とされ、国民の物語から排除された。しかし、会津の人たちは勝者による物語の独占に異を唱え、自分たちこそが真の勤皇の志士だったと主張する。そして、国民の物語への吸収を悲願とした。
 この願いは、1928年に会津松平家の節子(勢津子)と秩父宮雍仁(やすひと)の縁組が実現することで果たされる。さらに30年代後半、徳富蘇峰が各地で行った講演で、「会津は逆賊などではない」と強調し、その「尊王の大精神」を称揚したことによって達成された。そして会津の「勤皇精神」は「大東亜戦争」中に国民が見習うべき規範という地位を確立し、絶頂期を迎える。
 しかし「大東亜戦争」の敗戦によって、会津の人々はこの物語をリセットし、司馬遼太郎による「悲劇の会津」という新たな物語に飛びついた。会津人は「軍国主義の寵児(ちょうじ)」という側面を「忘却の淵(ふち)に沈め」、好都合な「司馬史観」に乗り換えたのである。その過程で白虎隊の「非業」や「純粋さ」が神話として再設定され、会津の観光化の中で利用されていったと著者は主張する。
 会津にとっての二度の敗戦経験は、どのような記憶を紡ぎだし、何を忘却していったのか。本書の問いかけは、会津という空間を越えて、靖国神社に象徴される「国家と死者」の問題に鋭いメスを入れている。

〈評〉中島岳志北海道大学准教授・アジア政治)
※※※(BOOK.asahi.com朝日新聞社の書評サイト http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2011071704693.html)より※※※


※※※ところで、
# 書評で紹介されているCiNii論文は必読です。
田中悟『戦後会津における「観光史学」の軌跡』 https://t.co/0xt37GZnH7

※「会津の悲劇」そのものが司馬遼太郎や宮崎十三八により相当盛った形で都市伝説として出来上がっていく様子が描かれている。


http://ci.nii.ac.jp/naid/110007145162
戦後会津における「観光史学」の軌跡 田中 悟
神戸大学大学院国際協力研究科
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000003kernel_81001449
 ↓
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81001449.pdf
が タダで読めると・・・・・・・・・・・・・

※※※
「CiNii」とは…
国立情報学研究所が運営する論文検索サービス
学術論文を検索してPFDファイルに落とせます。
要するに無料で読めるってことです。


 地道な研究と知の成果には相応の対価が払われるべきではないか…という議論もありますけどね??

 単行本は高いから、CiNiiにある論文を無料で読もう!…という発想は実に品下がる言い方ですが、それでもつい書いてしまう。


なにしろ、
ミネルヴァ書房・6825円
アマゾンで中古なら安いですけど、4800円…

買える余裕がある方は応援して下さいね??