大阪朝鮮学園補助金裁判(13)

争点7(国家賠償法上の違法及び故意過失の有無)について
(1) はじめに
国家賠償法1条1項にいう違法とは,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背することであり,当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認められる事情がある場合には上記法的義務の違背があるものというべきである(最高裁判所平成5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁等)。
(2) 検討
ア 上記6のとおり,原告がした本件A府申請はA府要綱に定めるA府補助金の交付要件を充たしていない以上,本件A府不交付が違法であると認めることはできない。
イ 原告は,前記第2の4(7)(原告の主張)のとおり,本件A府不交付が違法であると主張するが,上記6のとおり,原告はA府要綱に定める本件A府補助金の交付要件を充たしておらず,憲法26条,13条,社会権規約19条等の国際人権基準,平等原則及び後退的措置の禁止等によっても本件A府補助金の交付を受ける権利を認めることはできない以上,原告に本件23年度A府補助金の交付を受ける権利や利益を認めることはできないから,本件A府不交付によりこれらの権利や利益が侵害されたと認めることはできない。また,上記6(2)アのとおり,平成24年3月7日付け改正によりA府要綱に付加された4要件もこれが違法,無効であると認めるに足りる事情はない。
そして,原告は,本件A府不交付が原告を狙い撃ちにしたものであると主張するが,上記6(2)ウのとおり,そのような事実を認めることはできないし,本件A府不交付は,原告が被告A府職員から提出を求められたYの生徒に対する案内文書等の提出等をしなかったことなどの事情から,A府要綱2条8号に定める交付対象要件を充たしていると認めることができず,原告がA府要綱2条に定める交付対象要件を充たすものと認められなかったことによるものであって,相応の合理的理由がある。また,原告は,被告A府によるA府要綱の改正等が,行政手続法,A府行政手続条例に違反すると主張するが,本件A府補助金の交付関係は行政処分ではなく,A府要綱は被告A府の内部の事務手続を定めるものであるから,その前提を欠いているというべきであるし,上記認定事実(3)コ,サのとおり,平成24年3月7日付けA府要綱の改正に先立ち,原告に改正内容を伝えるなどしているから,被告A府の対応の経緯に注意義務に違反したといえる事情はない。
(3) 小括
以上のとおり,本件A府不交付に,国家賠償法1条1項の違法があるとは認められない。したがって,本件A府国賠請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。