大阪朝鮮学園補助金裁判(9)

4 争点3(本件A市確認請求に係る確認の利益の有無)について
(1) 確認の利益について
上記3のとおり,本件A市補助金はA市要綱に基づいて交付されるものであり,法令等を直接の根拠とするものとは解されないところ,A市要綱は,被告A市の内部における事務手続を定める趣旨であるから,A市要綱に定める所定の交付対象要件が備われば当然に給付請求権が発生すると解することはできない。他方,A市長が行う本件A市補助金の交付・不交付の決定が,抗告訴訟の対象となる「処分」に当たらないことは,上記3で説示したとおりであるから,本件A市補助金に係る具体的な給付請求権は,申込み(申請)と承諾(交付決定)により成立する贈与契約を原因として発生するものと解さざるを得ない。そうすると,承諾(交付決定)のない本件においては,贈与契約が未だ成立しておらず,具体的な給付請求権も発生していないことになる。そして,本件A市承諾請求についても,A市要綱が被告A市における内部手続を定めたものであることに照らせば,所定の交付対象要件に該当するとしても実体上直ちに被告A市に承諾義務が発生するものとは解されない。
上記を踏まえ,原告は,本件A市確認請求をしているところ,本件A市補助金の交付のような行為は,契約(贈与契約)という形式で行われるものであるとしても,教育の振興という行政目的を実現するために行われるものであって公益的性格を有していることは明らかであるし,被告A市は,本件A市補助金の交付事業を行うに当たっての基準としてA市要綱を定めている以上,内部の事務手続としてはこれに従って進めなければならず,これに反する事務運営は許されない。そうであるとすると,被告A市による本件A市補助金の交付は,契約として契約自由のそうであるとすると,被告A市による本件A市補助金の交付は,契約として契約自由の原則に服するものの,純然たる私法上の契約とは異なり,被告A市は,被告A市の内部における事務運営が上記の行政目的及びA市要綱の定めに沿ったものとされる点において制限を受けるということができ,これを申請者である原告の側からみると,被告A市において,本件A市補助金の交付対象としてA市要綱に沿った事務運営の対象とされることについて,一定の利益を有しているものと解することができる。
そして,申請者においては,上記利益を有することを背景に,本件A市補助金の交付を受けられる地位にあること,すなわち本件A市補助金の交付対象要件を充足することの確認訴訟を提起し,本件A市補助金の交付の可否について裁判所の公権的判断を求めることは,補助金交付の要否をめぐる問題を解決するための適切な手段であるということができる一方で,他に必ずしも適切な解決手段があるといい難いことに照らせば,本件A市確認請求について確認の利益を肯定することができる。
(2) 被告A市の主張について
これに対し,被告A市は,被告A市に対する本件A市補助金の交付を求める給付訴訟を提起すべきであり,本件A市確認請求は不適法であると主張する。しかし,上記のとおり,本件A市補助金は,A市要綱に基づいて交付されるところ,A市要綱は被告A市における内部の事務手続を定めたものにすぎず,申請者と被告A市との間での権利義務を規律するものとはいえない以上,被告A市による交付決定(申請という申込みに対してされる承諾)がされていない段階において,原告が上記給付訴訟を提起したとしても,これにより紛争の実効的解決を期待することはおよそできないというべきであるから,被告A市の主張を採用することはできない。
(3) 小括
したがって,原告の本件A市確認請求には,確認の利益があると認められる。

(4) 本件A府確認請求に係る確認の利益について
被告A府は,本件A府確認請求に係る確認の利益について何ら主張していないものの,上記と同様に,原告の本件A府確認請求についても,確認の利益を肯定することができる。