大阪朝鮮学園補助金裁判(1)

平成29年1月26日 大阪地裁 第7民事部判決
(平成24(行ウ)補助金不交付処分取消等請求事件)

朝鮮学園補助金裁判の判決文が[判例watch]で4月5日掲載されました。
http://kanz.jp/hanrei/data/text/201701/086663_hanrei.txt

[いち在日朝鮮人kinchanのかなり不定期更新日記]http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/mobile?guid=on
ここのブログ主さんが判決を載せくれるのを期待してましたが、
どこのブログでもまだ掲載されてませんね。


    主 文
1 本件訴えのうち、被告A府に対し、A府私立外国人学校振興補助金を交付しない旨の処分の取消しを求める部分及び同補助金の交付の義務付けを求める部分、並びに、被告A市に対し、A市義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金を交付しない旨の処分の取消しを求める部分及び同補助金の交付の義務付けを求める部分を却下する。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告A府に対する請求
(1) 補助金に関する請求
ア 1次的請求(主位的請求)
(ア) A府知事が原告に対して平成24年3月29日付けでした原告の平成23年度A府私立外国人学校振興補助金の交付申請を不交付とする旨の決定を取り消す。
(イ) A府知事は、原告に対し、上記交付申請に係る平成23年度A府私立外国人学校振興補助金を交付する旨の決定をせよ。
イ 2次的請求(上記アが認容されない場合の予備的請求)
被告A府は、原告が平成24年3月9日付けでした平成23年度A府私立外国人学校振興補助金の交付の申込みを承諾せよ。
ウ 3次的請求(上記ア及びイが認容されない場合の予備的請求)
原告が、A府私立外国人学校振興補助金交付要綱に基づき平成23年度私立外国人学校振興補助金の交付を受けられる地位にあることを確認する。
エ 4次的請求(上記アからウまでが認容されない場合の予備的請求)
被告A府は、原告に対し、8080万円を支払え。

(2) 上記(1)エを除く国家賠償請求
ア 被告A府は、原告に対し、330万円及びこれに対する平成24年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 被告A府は、原告に対し、8080万円に対する平成24年3月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告A市に対する請求
(1) 補助金に関する請求
ア 1次的請求(主位的請求)
(ア) A市長が原告に対して平成24年3月30日付けでした原告の平成23年度A市義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金の交付申請を不交付とする決定を取り消す。
(イ) A市長は、原告に対し、上記交付申請に係る平成23年度A市義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金を交付する旨の決定をせよ。
イ 2次的請求(上記アが認容されない場合の予備的請求)
被告A市は、原告が平成23年9月9日付けでした平成23年度A市義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金の交付の申込みを承諾せよ。
ウ 3次的請求(上記ア及びイが認容されない場合の予備的請求)
原告が、A市義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金交付要綱に基づき平成23年度A市義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金の交付を受けられる地位にあることを確認する。
エ 4次的請求(上記アからウまでが認容されない場合の予備的請求)
被告A市は、原告に対し、2650万円を支払え。
(2) 上記(1)エを除く国家賠償請求
ア 被告A市は、原告に対し、330万円及びこれに対する平成24年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 被告A市は、原告に対し、2650万円に対する平成24年3月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要(以下、別紙2「略語一覧」記載のとおり略語を用いる。)
学校教育法134条1項に定める外国人を対象とした各種学校を設置運営する学校法人である原告は、被告A府に対して、A府要綱に基づく本件23年度A府補助金8080万円の交付申請(本件A府交付申請)をし、また、被告A市に対して、A市要綱に基づく本件23年度A市補助金2650万円の交付申請(本件A市交付申請)をしたが,A府知事及びA市長によりいずれも不交付とする旨の決定(本件各不交付)を受けた。
本件は、原告が、本件各不交付がいずれも違法であるなどとして、被告A府に対し、1次的に本件A府不交付の取消し(請求1(1)ア(ア))及び本件23年度A府補助金の交付決定の義務付け(同(イ))を求め(本件A府取消等請求)、2次的に原告の本件A府申請に対する被告A府による承諾の意思表示を求め(請求1(1)イ。本件A府承諾請求)、3次的にA府要綱に基づき原告が本件23年度A府補助金の交付を受けられる地位にあることの確認を求め(同ウ。本件A府確認請求)、4次的に本件A府不交付により原告に本件23年度A府補助金相当額8080万円の損害が生じたとして国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として同額の支払を求める(同エ。本件A府補助金国賠請求)とともに、その余の国家賠償請求として、風評被害等の損害330万円(弁護士費用30万円を含む。)及びこれに対する遅延損害金(請求1(2)ア)並びに本件23年度A府補助金又は同相当額8080万円の支払の遅延により生じた損害金(同イ)の支払を求め(本件A府風評等国賠請求)、また、被告A市に対し、1次的に本件A市不交付の取消し(請求2(1)ア(ア))及び本件23年度A市補助金の交付決定の義務付け(同(イ))を求め(本件A市取消等請求)、2次的に原告の本件A市申請に対する被告A市による承諾の意思表示を求め(請求2(1)イ。本件A市承諾請求)、3次的にA市要綱に基づき原告が本件23年度A市補助金の交付を受けられる地位にあることの確認を求め(同ウ。本件A市確認請求)、4次的に本件A市不交付により原告に本件23年度A市補助金相当額2650万円の損害が生じたとして国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として同額の支払を求める(同エ。本件A市補助金国賠請求)とともに、その余の国家賠償請求として、風評被害等の損害330万円(弁護士費用30万円を含む。)及びこれに対する遅延損害金(請求2(2)ア)並びに本件23年度A市補助金又は同相当額8080万円の支払の遅延により生じた損害金(同イ)の支払を求める(本件A市風評等国賠請求)事案である。
なお、原告は、本件各風評等国賠請求について、主位的請求であるとともに予備的請求である旨記載するが(平成26年1月17日付け訴えの変更(追加)申立書)、同各請求は、本件各承諾請求や本件各確認請求等の補助金に関する請求と条件付ける趣旨は示されておらず、本件各風評等国賠請求は、上記補助金に関する各請求と単純併合のものを誤記したものと認める。
また、原告は、本件各承諾請求と本件各確認請求を、いずれも選択的請求と記載するが(平成26年2月18日付け訴えの変更申立書の補充書)、本件各確認請求は、給付請求である本件各承諾請求が認容される場合には確認の利益がなく不適法となることを前提に、被告らの承諾義務が認められず本件各承諾請求が認容されない場合でも、A府要綱及びA市要綱の各交付対象要件該当性の確認を求める趣旨のものと解され、いずれも本件各承諾請求が認容されない場合の予備的請求(3次的請求)と善解することができる。
1 関係法令等の定め
関係法令等の定めは、別紙3「関係法令等の定め」のとおりである。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実のほか各項掲記の証拠(以下、証拠番号に枝番のあるものは特記しない限り枝番を全て含む。)等により認定することのできる事実等)
(1) 原告
原告は、全国に27あるB学園の1つであり、ABC級学校のほかD級学校6校、D・E級学校2校、E級学校1校をA府内に設置する準学校法人である(甲71)。
(2) 本件A府不交付に至るまでの経緯
ア 被告A府は、昭和47年、「私立各種学校設備費補助金」に係る制度を創設し、原告に対しては、昭和49年度から同補助金を交付した。
被告A府は、平成3年度から、A府私立専修学校専門課程等振興補助金交付要綱に基づいて私立各種学校として認可している外国人学校について助成を行っており、原告に対してもこれに基づいて補助金の交付をしていたが、平成5年3月19日、A府要綱を制定し、以後、これに基づいて、平成22年度まで、毎年、原告に本件A府補助金を交付してきた。なお、同年度の原告に対する本件A府補助金の額は8724万5000円であった。(以上につき甲122、乙31、32、弁論の全趣旨)
イ 被告A府は、A府要綱を数回にわたって改正しているところ、平成24年3月7日付け改正前のA府要綱は、別紙3「関係法令等の定め」3(3)のとおりであった(甲9、11)。
ウ 原告は、平成24年3月9日、被告A府に対し、平成23年度分に係るFE級学校8校分の平成23年度A府補助金8080万円の交付申請(本件A府申請)をした(甲12、乙27)。
エ 平成24年3月16日、一部日刊紙の朝刊に、「B学校生 G氏に忠誠」と題し、「全国のB学校から選抜された児童・生徒約100人が1〜2月にH国を訪れた際、故Iと新指導者、G氏に忠誠を誓う歌劇を披露していた」とする本件新聞報道が掲載された(乙3)。
オ 被告A府は、平成24年3月29日、原告に対し、本件23年度A府補助金を交付しない旨の決定(本件A府不交付)をし、その旨原告に通知した。なお、本件A府不交付を通知する書面には、不交付の理由として、A府要綱2条8号に「該当しているとの確証が得られず」、A府要綱「2条に該当するものと確認できない」旨の記載がある。(以上につき甲13)

(3) 本件A市不交付に至るまでの経緯
ア 被告A市は、昭和62年度から、各種学校における学校教育の目的を達成するために必要な教具・施設の整備及び学校の維持運営に対する補助金として、原告に対する補助金の交付を行っており、平成3年にはA市要綱を制定し、以後、これに基づいて、平成22年度まで、毎年、原告に本件A市補助金を交付してきた。なお、同年度の本件A市補助金の額は2650万円であった。(以上につき甲123、弁論の全趣旨)。
イ 原告は、平成23年9月9日(同月12日消印)、被告A市に対し、平成23年度分に係るFE級学校8校分の平成23年度A市補助金2650万円の交付申請(本件A市申請)をした(甲16、丙8、弁論の全趣旨)。
ウ 被告A市の担当者は、平成24年3月8日、A市役所J局内において、原告に対して、「B学校に対する補助金支給にかかる要件」と題する本件メモを交付した。なお、本件メモには、次の(ア)から(オ)までの記載がある。
(以上につき甲17、丙8)
(ア)「日本の学習指導要領に準じた教育をする」
(イ)「学校の財務内容の公開」
(ウ)「Kとの関係を清算する」
(エ)「肖像画を教室から撤去する」
(オ)「肖像画を職員室から撤去する」
エ 被告A市は、A市要綱を数回にわたって改正しているところ、平成24年3月27日付け改正前のA市要綱は、別紙3「関係法令等の定め」4(3)のとおりであった(甲15、18)。
オ 被告A市は、平成24年3月頃、原告に対し、本件23年度A市補助金を交付しない旨の決定(本件A市不交付)をし、同月30日、原告に通知した。なお、本件A市不交付を通知する書面には、本件A市不交付の理由として、A市要綱2項の本件A市補助金の交付対象法人ではない旨の記載がある。(以上につき甲19)

(4) 本件訴えの提起
原告は、平成24年9月20日、本件訴えを提起した。なお、原告は、当初、本件各取消等請求を掲げていたが、平成26年1月17日、行政事件訴訟法19条の追加的併合により、各被告に対するその余の請求を追加した。
(以上につき顕著な事実)
(5) 本件訴え提起後の事情
被告A市は、平成24年7月30日、A市要綱を廃止した。
A府知事は、平成28年4月1日付けで「私立学校に関する事務」をA府教育長に委任した。