在日コリアン人権運動の理論構築について(16)

オ.少数派国民(コリア系日本人)として生きる
 在日コリアン日本国籍を取得すれば日本の憲法を尊重する義務を負う。反対論者が主張する日本国籍による同化とは、帝國憲法下で在日コリアンが主権者たる天皇の下の臣民であったという歴史的経験に基づくものである。しかし、解放後、帝國憲法は廃止され現憲法がそれにとって変わった。現憲法に定められる主権者は、国民である。在日コリアンが、自身をも含めた多くの人々の犠牲の上に獲得された現憲法を尊重するのは当然であり、日本国籍を取得した少数派国民として日本の主権者となり、日本の現在及び将来に責任と自覚をもって積極的に参画することは、在日コリアンが市民としての道を切り開くことを意味する。国民主権とは市民主権であり、市民とは「他人の決定や行動で年がら年中でたらめに振りまわされるようなことには、我慢できない存在である。」(カレン・バン・ウォルフレン)。在日コリアンはこの日本で、いまだかつて自分たちの行き方を自分で決定した経験がない稀な存在である。このような生き方にいつまで甘んじるべきなのか。「でたらめに振りまわされる」奴隷状態を自分たちの時代で終止符を打ち、自分たちが生きるこの社会に対してイニシアティブをもって、自由で豊かな生活を、子や孫たちに引き継ぐ義務があるというべきである。