大阪朝鮮学園補助金裁判(5)

(5) 争点5(本件A府不交付における手続的違法の有無)について
(原告の主張)
被告A府は,A府行政手続条例において,申請に対する処分をするに当たり,審査基準を具体的に定め,予め公にしておくことが求められている(5条)。しかし,被告A府は,原告が申請を行う直前にA府要綱を改正して4要件を付加し,交付対象の要件として新しく付加された部分について確証が持てないことを理由として本件A府不交付をしたのであって,審査基準が予め公になっていたとはいえない以上,このようなやり方は,A府行政手続条例5条に違反しているというべきである。その意味においても,本件A府不交付は取り消されなければならない。
(被告A府の主張)
本件A府不交付は,A府要綱に定める交付対象要件を充たさなかったことによるものにすぎず,行政処分でもないから,A府行政手続条例に違反するものでもない。

(6) 争点6(被告A府の承諾義務の有無)について
(原告の主張)
上記(4)(原告の主張)のとおり,原告は,A府要綱2条の交付対象要件を充たしていた。
本件A府補助金の交付が契約によるものであるとしても,その公益的性格から純然たる私法上の契約とは異なり,行政処分に準じた公平さや上位規範に沿った扱いが要求され,契約自由の原則が制限される。そして,上記(4)(原告の主張)イ(ア)のとおり,原告には本件A府補助金の交付を受ける権利・利益があることなどの事情に照らせば,A府要綱2条の交付対象要件を充たしていながら被告A府が本件A府補助金の交付を拒否することは許されないというべきである。
したがって,被告A府は,原告に対し,本件A府申請を承諾する旨の意思表示をしなければならない。
(被告A府の主張)
争う。
なお,上記(4)(被告A府の主張)のとおり,原告は,A府要綱2条に定める交付対象要件を充たしていたとは認められないから,被告A府に承諾義務はない。
(7) 争点7(国家賠償法上の違法及び故意過失の有無)について
(原告の主張)
上記(4)(原告の主張)のとおり,A府要綱2条の交付対象要件を充たしているにもかかわらずされた本件A府不交付は違法であるし,上記(5)(原告の主張)のとおり,本件A府不交付をするに当たり手続的な違法がある。そうすると,A府知事がした本件A府不交付には国家賠償法上の違法があり,故意又は過失も認められる。
(被告A府の主張)
上記(4)及び(5)の各(被告A府の主張)のとおり,本件A府不交付に違法はない。本件A府不交付をしたA府知事に国家賠償法上の違法や故意・過失があるとする原告の主張は,否認ないし争う。
(8) 争点8(損害額)について
(原告の主張)
ア 本件A府補助金国賠請求に係る損害
本件A府不交付により,原告には,本件23年度A府補助金相当額8080万円の財産的損害が生じた。
したがって,原告は,被告A府に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として8080万円の支払を求める。
イ 本件A府風評等国賠請求に係る損害
本件A府不交付が取り消されるなどして本件23年度A府補助金が交付され,又は本件23年度A府補助金相当額の損害賠償金が交付されることにより,本件A府不交付により原告に生じた当該補助金の元金部分に係る損害(8080万円)は・補されるとしても,同元金部分が・補されるまでの遅延損害金に相当する額は・補されるものではない。そうすると,この遅延損害金に相当する額は別途損害として・補されなければならない。
また,本件A府不交付により原告に生じた風評被害等の無形の損害は300万円を下ることはない。そして,訴訟提起のために弁護士費用を要しているところ,その費用は30万円を下らない。
したがって,原告は,被告A府に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として,330万円及び8410万円(交付されるべきであった本件23年度補助金相当額8080万円に上記330万円を加算した額)に対する平成24年3月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告A府の主張)
否認ないし争う。